MAGAZINE  2010年7月号 掲載

KOID9

フランス>

フランスのプログレ専門誌「Koid 9」の2010年7月号(No.74)でBARAKAが紹介されました。

( 記事内容 )
Prog’Sudライブレビュー / インタビュー / 『 INNEER RESONANCE 』 アルバムレビュー


ライブレビュー (要訳)   ※2010年5月15日 Prog’Sudに出演したBARAKAのライブ評

3度目の出演となるBARAKAはこのフェスティバルの常連である。Alex Carpani Bandと共に私が今回のフェスでとりわけ楽しみにしていたバンドであるが、そのステージは完璧であった。
1曲目の“Palm Trees of the Maldives” は、最高の域に達したパワートリオ、BARAKAが常に演奏する曲である。ドラマーMaxがほぼ冒頭から長く素晴らしいソロを披露したが、私にはリズムの連続というよりメロディーのように聞こえた。
“Bharmad” ではこのバンドの変化が垣間見えた。メロディーラインだけは不変だが、その他はすべてリアレンジされている。曲は同じでも違う演奏を聴くことができるのがライブ鑑賞のおもしろみである。
次の2曲 “Reflected Waves” “Atlantic” は、ニューアルバム 「INNER RESONANCE」 に収録されている新曲である。より穏やかでジャズロック的だ。これらの曲は澄んでいて、各メンバーが奏でる一音一音を感じ取ることができる。これにより BARAKAは繊細さと力強さの結合が可能であることを見事に証明してみせた。聴衆は衝撃を受け、優れたミュージシャンと非常に優れたミュージシャンの違 いを認識し始めていた。非常に感動的であったため、“Atlantic” の最後の20秒間は、涙が込みあげてきた。
残りの3曲、“Five Rings”“The Chair made of Guns”“The Definition” もこのバンドの軌道修正を免れていない。過剰な装飾や激しさを排除されて慎み深く、感情が優先されて軽やかである。流れるような流動性が音楽における表現としては希有な美しさをもたらしている。Shin, Max、Issei は過剰を排してちょうど必要な数だけの音でメロディーを刻んでいる。
強烈なLED ZEPPELIN と同類のBARAKAを再び聴きたいと思っていた人々の期待は満たされなかったが、そうした人々も、彼らが示したグルーブとフィーリングというもっとずっ と難しい試みに感動した。音楽へのアプローチの方法が大きく変化し、最高に純化されたジャズロックが生み出された。
BARAKAは極めて魅力的な新しい顔を見せてくれた。しかし変身したのではない。三人の才能からすればこの変化は当然の帰結なのである。彼らは今夜、我々に本当に素晴らしいプレゼントをしてくれた。


インタビュー (要訳)結成以来13年でアルバムを9枚リリースしているが、バンドのキャリアについてどう思うか?
⇒ 継続は力なり

ムゼアとの契約はバンド活動の推進力となっているのか?
⇒ 全世界発売によって多くの国の人々にBARAKAの音楽を聴いてもらうことができるようになり、力になっている。

前作「Shade of Evolutionの販売枚数は?
⇒ 約1000枚

● リハや新曲作りに費やす時間は?
⇒ 週4時間

ライブでの観客の反応に国による違いは?
⇒ 日本の観客は比較的静かで真面目に聞いてくれる。欧米の観客はストレートに反応を表してくれる。

● 最新アルバム「Inner Resonance」はコンセプトアルバムか?神秘性を求めているのでは?
⇒ 神秘性を求めたコンセプトアルバムだ。何度でも聴けるアルバムを作りたかった。

アルバムの最初と最後の曲はなぜ新曲ではなくリメイクなのか? PalmtreesとThe Definitionの2曲を選んだ理由は?
⇒ リメイクという意識はない。ツアーでのステージをイメージしてこの2曲を最初と最後にした。

● このようなスタイルの変化に至った理由は?
⇒ 意図的な変化でなく、7thアルバムでインストゥルメンタルにしてからの自然な流れだ。

Isseiがギターシンセを使用している理由は? この楽器に合う曲作りをしたのか?
⇒ ギターシンセは曲の効果を拡げる為に使っている。楽器に合わせて曲作りをすることはない。

● アルバムの約半分をアトモスフェリックな曲が占めているが、多すぎるとは思わないか?
⇒ 多いとは思わない。そういう曲を多くしたかった。

● 初期のファンを困惑させるおそれはないのか?
⇒ 困惑させている部分があるのは分かっているが、自分達の基本的な部分は変わっていないと思う。

このような音楽の簡素化は意識的に行っているのか?それとも自然な進化なのか?
⇒ 自然な進化だ。ムダな音を排して楽曲、アンサンブルを表現したかった。

3人のうちこの変化の起点になっているのは?
⇒ 3人で話し合って決めている。音楽面での舵取りをしているのはisseiだ。

このアルバムでは、ベースの音が弱いように思えるが?
⇒ そうは思わない。ベースパートは安定していると思う。

これまでのアンバランスを修正したということか?
⇒ 前作ではアンバランスだったという意味ではない。それぞれの曲のイメージに最適な音のバランスにしたかったということだ

● 細部にこだわったということか?
⇒ そうとも言える。できるだけ最高のものを聴いてもらいたいと思っている。

● なぜIsssiは十字架をつけているのか?
⇒ 友人からプレゼントされたから。日本ではクリスチャンは少ないが、十字架の形をしたアクセサリーを好んで付けている人は多い。

● Prog’Sudでのライブは秀逸だったが、演奏中そのことを意識したか?  演奏直後の感想は?
⇒ 演奏中は丁寧に表現することに集中していた。 終演後は、最高に気持ち良かった!

「Five Rings」のイメージやバンドの進化を見ると、あなた方は刀を使う侍よりも刀を造る刀剣師であろうとしているように思えるが?
⇒ 己の信念を強い意志で貫くのが侍ならば、我々は楽器を刀とした侍であると言えるのではないだろうか。

伝えたいメッセージは?
⇒ 最新アルバム「Inner Resonance」を是非聴いて欲しい。 機会があれば是非ライヴにも来て欲しい。


INNER RESONANCE アルバムレビュー (要訳)

1997年に結成されたBARAKAがすでに9枚目となるアルバムをリリース。このニューアルバムはこのバンドの転換点のように思われる。PROG’SUD 2010でのライブが示しているように、BARAKAは70年代のメタル、ハードロックの影響から脱してエモーショナルな音楽へと向かっている。

しかし1曲目の “Palm Trees of the Maldives” ではそれはよくわからない。この曲は 「BARAKA II」 以来アルバムに収録されるのは3度目だからだ。この2010年バージョンでは、Ed Wynne 風のギターが OZRIC TENTACLES を思わせるが、曲が変質しているわけではない。変化を感じさせるのは次の “Reflected Waves” である。ジャズロックの影響を感じさせるこの曲ではギターシンセが使われている。それによってトリオ編成を維持しつつ新しいサウンドを生み出すことが可能となり、スペースロック的でありながら、同時に人間味のある作風に仕上がっている。

短い楽曲 “Plunge from the darkness” は雰囲気の変化に効果的だ。 “Atlantic” は崇高である。とても穏やかで軽やかなこのゆっくりとした楽曲は詩情と美しさを兼ね備えている。Issei のアルベジオは申し分なく魂へのメッセージのような効果を醸し出している。“Seam of the Globe” における Issei には驚かされる。彼は尽きることのない音の泉であり、天才的な即興でメロディーを生み出す。最後の2分間は、Steve Hillage の世界へと変わり、ギターシンセが音楽に深みを与える。

“Yggdrasil”とその東洋的なパーカッションについても同様のことが言える。GONG のギタリスト Steve Hillage の素晴らしいアルバム“Green”を思い起こさせる。 確かにBARAKAの作風はそのスピリットにおいて OZRIC TENTACLES 的なものへ向かっているとも言えるが、“スペース” というラベルを貼ることはできない。それよりも純化された神秘的な音楽である。

彼らと同じ国の Kitaro に近いスタイルの次の2曲 (“The Chair made of Guns”“Gate to Principle”) は、非常にアトモスフェリックで内省的であり、エネルギッシュなパワートリオとはかけ離れている。 これらの2曲には彼らによく見られる常識を超えた意外性はないものの、スタイルの変化を感じさせるとともに、心に迫っていくるものがある。

最後の曲 “The Definition” で我々の知るパワフルなトリオに再会することになる。これは4枚目のアルバムに収録されている曲の新バージョンである。ヴォーカルなしのこの曲は、スピリチュアル・プログレという新しい範疇に入る。「INNER RESONANCE」 をコンセプトアルバムとして捉えるなら、この最後の曲は彼らの自己追求の到達点を表しているのかもしれない。パワフルな部分とメロディアスで繊細な瞬間の癒合による効果が表現されている。 「INNER RESONANCE」 でBARAKAは、メロディーをこれまで以上に効果的に使っている。この進化は困惑させることがあるかもしれないが、同じことを繰り返したくないという意志があるなら変化するのはごく自然なことであろう。