【Baraka】 “A Night at the Open”
我らが日本のBarakaにとって既に13枚目となるアルバム。但し今回は新たな曲はなく、数年前に既にBeatlesの「ホワイトアルバム」を使ってやったように、アルバムジャケットとタイトルからお察しの通り、今回はQueenの楽曲を新しい解釈でカバーしている。
しかしながら、タイトルが示すような“A Night at the Opera”のカバーという訳ではなく、様々なアルバムから選曲されたもののカバーである。
彼ら(Baraka)が天才的なやり方でFab Fourの音楽を書き改めた「Beatlesのカバーアルバム」とは異なり、今回は僅かにオリジナルバージョン寄りであり、こう言うのが可能ならば、殆どより良いものにしている。
いずれにせよBaraka流の味付けでだが、もう一度言うが、凄くうまくいっているのだ。
ジャケットの裏には、約40分で10曲のタイトルが収められてる旨示されている。しかしここにはサプライズが隠されている。
“Tie Your Mother Down”は東洋風の銅鑼で導入されるが、むしろ原曲に忠実に表現され、それは”You Are My Best Friend”のイントロに限っても同様である。
イントロに限ってというのは、他の部分はテンポを落としヴォーカルが60年代のサウンドをもたらすBeatlesのスピリットの中で演奏されているからだ。
“I Was Born To Love You”はそうではない。イントロはメタルで他の部分はUB40のスピリットでレゲエを奏でている。
大変熱狂的で、日本酒が頭に回ったらどうなるか?その結果がここにある!
“Don’t Stop Me Now”はとりわけそのアコースティックギターが、そして何と言っても殆どルンバといっても良いほど、テンポを遅くして完全に曲の骨組みを変えている点が素晴らしい。
更に象徴的と言えるのは“We Will Rock You”であり、この短いバージョン(2分10秒)は、ほとんどTOTOが作曲したのかもしれないと思えるほどだ。
いずれにせよ、それは出だしについてのことである。というのも、その後は悪魔のような高見一生が歌に満足出来ず、まるでブライアン・メイのように、白熱したソロを遠慮することなく披露しているからで、彼がそれをせずにはいられなかったことが感じられる。
“Now I’m Here”についても、ギターを楽しむネタがある。しかし類似性を見るべきなのはチープ・トリックの方にだ。というのはベースとリズムギターがロビン・ザンダーがいるバンドのそれと同じだからだ。
“Killer Queen”は全く面影がない。ほとんどチャーリー・オレグ風で、電子キーボードがふんだんに使われている。ただギターだけが鋭く尖ったままである。
世間的に余り認知されていない“Good Old-Fashioned Lover Boy”はレゲエとBeatlesの混合物に姿を変えていた。確かにオリジナルバージョンはこの変身を受け入れた方がきっと良いだろう。
“Radio Ga Ga”はディスコミュージックのリズムとギターのラインを保っているが、それだったら私は、よりちょっとテクノ音楽っぽくて、例えばFlash Gordonでギターが持っていた音の響きをより一層持っているこのバージョンの方を好む。
“Teo Toriatte”をオリジナルより良くすることは難しい。それ故ほぼ半分の2つのパートに分割されただけでなく、表現はかなりオリジナルに近付けられていた。この曲でディスクは終了かと思われた。
ところが10分34秒に及ぶ隠しトラックがあり、そこでトリオはほぼ半ダースの楽曲によるメドレー(それについては何も申し上げないが)を、制約の無さや快楽によってだけでなく、更にもっと遠慮することなく自由に表現している。これがこのディスクのサプライズなのだ!
世に出た、見事な「Queenの世界のリライト」であるこのディスクを私は大変好むし、Barakaには他の妄想を心ゆくまで楽しみ、その意志の中で例えばGenesisに立ち向かってくれることを期待している。
ブリュノ・カッサン
(Bruno Cassan)
訳:大柳貴